「ユマニチュード」という言葉をご存知でしょうか?
ユマニチュードはフランス語で「人間らしさ」を意味し、特に認知症や高齢者のケアに関わる方法として注目されています。
ユマニチュードとは、人と人との「関係」を大切にし、ケアを通じて相手の尊厳を守りながら、心地よいコミュニケーションを作り出す方法です。
このケア技法は、1980年代にフランスの看護師エマニュエル・リュッカさんとそのパートナーであるフィリップ・リュッカさんによって開発されました。
ユマニチュードは誰に必要?
ユマニチュードは、特定の人々だけでなく、幅広い状況で活用できるケア技法です。
特に認知症の方や高齢者のケアにおいて効果が高いとされていますが、赤ちゃんから高齢者まで、あらゆる年代でケアを必要としている方々に活用することができます。
さらに、ユマニチュードは資格がなくても誰でも実践できるため、家族や介護職の方々が日常生活の中で取り入れることができます。
これにより、ケアを受ける人の尊厳を守り、良好な関係を築くことができます。
ユマニチュードの実践例
では具体的に、どんな実践例があるでしょうか?
ユマニチュードの技法を活用することで起きた変化について、いくつかの具体例を挙げてみます。
拒否的言動の軽減
認知症の方が、ケアに対して強い抵抗を示していました。
しかし、ユマニチュードの方法を用いて穏やかな声かけと優しい触れ合いを続けた結果、次第に抵抗が減り、ケアを受け入れるようになりました。
入浴時のケア抵抗の改善
入浴時に強い抵抗を示す利用者様に対して、ユマニチュードの技法を実施しました。
ケア前に目を合わせ、穏やかな言葉で声をかけることで、安心感を与え、入浴への抵抗を軽減することができました。
行動・行為障害の軽減
あるグループホームで、徘徊や不穏な行動を示す認知症の方にユマニチュードの技法を取り入れた結果、行動が落ち着き、より安心して生活できる環境が整いました。
ユマニチュードの4つの柱
ユマニチュードには、ケアにおける重要な4つの柱があります。
それぞれの柱が、ケアを受ける人とケアをする人との信頼関係を築くための大切な要素です。
1. 見る
相手の目をしっかり見つめることで、平等な関係性と正直さを伝えることができます。正面から、穏やかな視線で長い間、目を合わせることがポイントです。
2. 話す
穏やかでゆっくりした言葉を使い、前向きなメッセージを伝えます。例えば「これからお風呂に入りますね」と実況中継をすることで、相手は自分が今何をされているのかがわかり、安心感を持つことができます。
3. 触れる
優しく、広い面積で触れることが大切です。触れることで愛情や安心感を表現することができます。触れる順番としては、肩や背中から始め、手や顔など敏感な部位は慎重に触れます。
4. 立つ
立つことで、体に必要な栄養が行き渡り、健康的な状態が保たれます。立位をサポートすることで、血流が良くなり、褥瘡(床ずれ)の予防にもつながります。
ユマニチュードはどんな場面で活用できる?
ユマニチュードは、特に次のような場面で効果を発揮します。
認知症の方とのコミュニケーション
言葉による意思疎通が難しい場合でも、目を合わせることや触れ合いを通じて、安心感や信頼感を伝えることができます。
ケアの拒否や抵抗がある場合 穏やかな声かけや優しい触れ合いを通じて、ケアを受け入れてもらいやすくします。
日常生活動作のサポート
立位や歩行をサポートすることで、身体機能の維持や回復を促進します。
ユマニチュードを実践することで、ケアを受ける方の尊厳を守り、心身の健康をサポートすることができます。
誰でも実践できるこの方法を、日々のケアに取り入れてみてください。
参考文献